下肢レバーアーム機能障害(LAD)は、脳性麻痺児の股関節内旋、大腿骨と脛骨間の回転変形、足のプロネーションなどの歩行異常の原因としてよく知られており、いずれも年齢の上昇に伴って正の相関を示すとされています。
図1 片麻痺の子どもによく見られる異常歩行パターン(出典。Rodda J, Graham HK. Classification of gait patterns in spastic hemiplegia and spastic diplegia: a basis for a management algorithm. Eur J Neurol 2001;8(suppl 5):98-108.)
バレエのウォームアップの基本動作であるデミ・プレイは、健常者の股関節の最大外旋角度を改善し、骨盤の前傾角度を小さくし、股関節と骨盤の角度比の変化を改善することが研究で明らかにされています。
以上の情報をもとに、NOKOVモーションキャプチャシステムを用いて、脳性麻痺児の下肢の関節角度と関節モーメントを、足の偏位角度を変えて(30°、60°、90°、120°)Demi Plie操法を行った際に観察・分析し、Demi Plie操法が脳性麻痺児のLAD問題を改善するのか、それとも悪化させるのか推測することを目的としました。
図2 バレエのフットポジション(青丸で囲ったのが2つ目の使用フットポジション)
図3 3Dモーションキャプチャデータシステム取得のフローチャート
図4 デミ・プライのモーションキャプチャーのイメージ図
図5 オリエンテーションを設定する仮想座標系(X軸は矢状面(屈曲・伸展角)、Y軸は冠状面(内転・外転角)、水平面(左右回転角)における下肢関節の動きをそれぞれ表す)。
図6 2群(脳性麻痺児と同年齢の健常児)のデミ・プレイ運動における足関節のX、Y、Z軸の関節角度と関節モーメントのフラクトグラム
図7 2群(脳性麻痺児と同年齢の健常児)のデミ・プレイ運動における膝関節X、Y、Z軸の関節角度と関節モーメント
図8 2群(脳性麻痺児と同年齢の健常児)のデミ・プレイ運動における股関節のX、Y、Zの関節角度と関節モーメントのフラクタル図
図9 Demi Plie操縦による2群(脳性麻痺児と同年齢の健常児)のX、Y、Z軸の骨盤可動性の折りたたみ式グラフ
即時データの分析から、Demi Plie操縦法は、大腿骨の内旋、脛骨の内旋、足底屈を特徴とするLADの脳性麻痺児に有効であり、脛骨の外旋を伴うしゃがみ込み歩行や足底屈の脳性麻痺児には有効でないことが示唆されました。 また、外足の開脚角度が大きすぎると脳性麻痺児のLADを悪化させる可能性があるため、Demi Plieは避けなければなりません。30°または60°でのDemi Plie動作は、より安全な足外開きクランプ角度数です。
現在、3Dダイナミックキャプチャシステムは、脳性まひの子どもの臨床現場で、健常児の規範モデルに基づく歩行の解析や、この技術に基づくターゲットを絞った個別介入の開発に利用されており、臨床医やセラピストにとって大きな価値がある。 しかし、子どものリハビリテーションが進化していく中で、バレエをベースとしたダンスやその他の社会的・娯楽的介入など、ICF(国際機能・障害・健康分類)の枠組みに基づいた統合的介入がさらに推進されるでしょう。 また、3Dモーションキャプチャシステムは、正確で客観的な動作の評価ツールとして、今後の子どものリハビリテーションに重要な役割を果たすと思われます。
参考文献。
1.Kedem P, Scher D M. Evaluation and management of crouch gait[J]. Current opinion in pediatrics, United States: 2016, 28(1): 55–59.
2 Blumstein G, Kay R M, Dorey F, et al. Prevalence of specific gait abnormalities in children with cerebral palsy revisited: influence of age , prior surgery , and Gross Motor Function Classification System level[J]. 2016: 79–88.
3 Coker E, McIsaac T L, Nilsen D. Motor imagery modality in expert dancers: an investigation of hip and pelvis kinematics in demi-plié and sauté[J]. Journal of dance medicine & science, 2015, 19(2): 63–69.
4 Gontijo K N S, Candotti C T, Feijó G D S, et al. Kinematic evaluation of the classical ballet step “plié”[J]. Journal of dance medicine & science ,2015, 19(2): 70–76.
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